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美輪明宏の 『黒蜥蜴』

5月5日にル テアトル銀座で、美輪明宏の『黒蜥蜴』を見てきました。

芝居を見るのは、前のほうの席に限ります。表情が肉眼ではっきり見えるのが観劇の必須要件ですね。今回やや舞台上手にはなりましたが、前から5列目でなかなかいい席でした。

美輪明宏の芝居を見に行くのは三島由紀夫の戯曲だから…です。しかし、美輪明宏の存在感が大きく、タイトルも「美輪明宏の」としました。

作家の支配性の強い三島作品の舞台で、俳優あるいは演出家の名前を冠するのは馴染みませんが、美輪明宏の場合は別格です。

さらにこの作品は原作が江戸川乱歩によるものなので、より事情は複雑です。江戸川乱歩→三島由紀夫→美輪明宏まで、ある意味、換骨奪胎の連鎖によって成り立った舞台とも言えます。

ストーリーは浮き世離れした幻想的なものですが、美輪明宏が司祭となって、一瞬幻想が煌めいてリアルだと感じ取れる瞬間があるんですね。それを期待して行きましたが、期待に違わず、何度か幻想がリアルに煌めきました。

元々三島の戯曲には、「このレトリックを観客に説得するのは難しいだろう」と思われる部分が存在します。それがこの煌めきによって、すっと腑に落ちるんです。

他の追随を許さない演出と演技、美輪以外の人ではなかなかこうはいきません。

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新国立劇場『朱雀家の滅亡』2

今日『朱雀家の滅亡』の楽日を観て来ました。

9月20日の初日を観たのち、10月4日にシアタートークという演出家と一部の出演者によるトークショーがありました。そこで「日々いろいろな発見があって芝居も変化している」という話を聞き、ぜひもう一度見てみたいと思ったからです。

この芝居の舞台は客席に細長く張り出した形になっていて、正面だけでなく、舞台の左右にも客席があります。初日を見たときは、正面のC席だったので、どうせもう一度観るなら、ぜひ左右の席で観たいと思いました。インターネット予約だったのですが、右手のR席が出るまで何度もトライして、思い通りの席のチケットを入手しました。

出演は國村隼、香寿たつき、近藤芳正、木村了、柴本幸の5人のみの劇です。

初日に観たときは、國村隼、香寿たつきの充実ぶりに比べて、木村了、柴本幸のふたりの若手が役をもてあましている感じがあったのですが、今日はふたりにも不足を感じることはなく、充実した舞台を観せてくれました。

これまで三島の劇は登場人物に感情移入して楽しむものではなく、飛び交う台詞のうちに劇の背後に見えてくるなにものかを楽しむものだと思っていました。ドラマが自立して、ただのお芝居ではない硬質の感触を与えてくれます。

ところが今回の『朱雀家の滅亡』では、登場人物それぞれが、芝居の1個の駒でなく、独立した信念と心情をもって激しくぶつかり合う様を観せてくれました。5人のそれぞれの心情がひしひしと迫ってきて、それぞれに共感し思わず涙してしまうという驚きの展開でした。

小説を含め三島作品でよく言われるのは、複数の登場人物も本来ひとりの人格を分割して振り分けたものであるということで、私も三島戯曲の舞台では、これほどまでに人間と人間がぶつかり合う葛藤を感じたことはありませんでした。

演出は新国立劇場の演劇芸術監督の宮田恵子ですが、これが演出の力なのでしょうか? それともキャスティングの成功、役者の方々の力だったのか?

いずれにしても、最高の舞台を観せてもらいました。

新国立劇場『朱雀家の滅亡』1

昨日、初台にある新国立劇場の小劇場での公演『朱雀家の滅亡』を観て来ました。

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クラシックはマーラーだけ生を聴きに行きますが、同様に芝居は三島由紀夫の戯曲だけ観に行きます。

三島由紀夫の戯曲は、舞台の上で俳優が硬質で詩的な台詞をしゃべりまくるところに魅力があり、そういう意味ではリアリズムからもっとも遠い芝居です。

そういうアンチ・リアリズムの台詞の応酬の向こうに、この世のものではないものが見えて来て、ああいいなぁと思ってしまいます。能なども幽霊が登場人物だったりするので、芝居とはそういうものなのだろうと勝手に思っています。

他の人の芝居は観ないので、どうか分かりませんが…。

実は『朱雀家の滅亡』は以前中村伸郎主演のものを観ています。ネットで調べてみると、1971年9月ということらしいので、ちょうど40年前のことになります。1971年といえば三島の死の翌年、私はまだ高校生だったことになります。

記憶では大学生の頃のような気がするので、ほんとうかなぁと思うのですが、いずれにしてもその時は本当の面白さは分からなかったですね。

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筆者のプロフィール

  • 竹内 晃

  • 1953年巳年生まれ
    電子楽器メーカーコルグに30年間勤務。退職後インディーズチケットオンラインを立ち上げ、現在に至る。

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