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マーラー・ツィクルスVと東京芸術劇場

1月20日(日)にインバル=東京都交響楽団のマーラー・ツィクルスVを東京芸術劇場で聴いてきました。今回はホールの音響の確認もミッションです。

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まず、交響曲第5番ですが、マーラーの交響曲のなかでも音楽的密度の高い楽曲だということを改めて感じました。

マーラーの交響曲は、音楽要素以外の何かで楽曲が進行していくという印象があります。突然新しいメロディーが前の流れを断ち切るように現れてくることや、舞台裏オケの設定等が示すように、音楽の背景になんらかの物語が存在しているということです。

ところが、第1番から5番まで順番に聴いてきた印象では、他とは違って第5番は突然何かが起こるということがなく、一点に収束していくような音楽的必然性だけで進行していると感じました。1月20日の演奏は、それほど緊密に構築されていると感じさせる演奏でした。

長年マーラーの中でも圧倒的に好きな交響曲だった理由のひとつはそこにあったんだなと、思いました。

さて、東京芸術劇場の大ホールの音響はどうだったか、です。

まず、残響が多いホールであることを確認しました。それもリバーブレーション成分だけでなく、原音から数百ミリ秒くらい遅れて強いリピートエコーが発生しています。マーラーの第5番の前に、モーツァルトのフルート協奏曲の演奏があリ、フルートのカデンツァの部分で、それがよく分かりました。

実は、その2日前に東京オペラシティの大ホールで、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のマーラー第4番を聴いてきたのですが、それが問題点を鮮明にする手掛かりとなりました。

東京オペラシティの大ホールは、これまた対照的に残響が極端に少ないホールで、マーラーの前に演奏されたモーツァルトの交響曲25番は、まるで室内楽のようにすき間の多い音だったのです。そのため、東京芸術劇場の残響の多さをはっきり認識することができました。

昨年の9月に第1番を聴いたときに感じた音の悪さは、やはり前日に飲み過ぎたお酒の影響もあったようで、そこまで音響が悪いとは思いませんでしたが、深いリバーブレーションはまだしも、演奏される曲に影響を与えそうな強いリピートエコーはいかがなものかとは思います。

いろいろなホールがあって、ホールを聴きに行くのも楽しみのひとつとも言えるかもしれません。それでも、東京芸術劇場の音響にあまりよい点数はつけられないというのが私の結論です。