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美輪明宏の 『黒蜥蜴』

5月5日にル テアトル銀座で、美輪明宏の『黒蜥蜴』を見てきました。

芝居を見るのは、前のほうの席に限ります。表情が肉眼ではっきり見えるのが観劇の必須要件ですね。今回やや舞台上手にはなりましたが、前から5列目でなかなかいい席でした。

美輪明宏の芝居を見に行くのは三島由紀夫の戯曲だから…です。しかし、美輪明宏の存在感が大きく、タイトルも「美輪明宏の」としました。

作家の支配性の強い三島作品の舞台で、俳優あるいは演出家の名前を冠するのは馴染みませんが、美輪明宏の場合は別格です。

さらにこの作品は原作が江戸川乱歩によるものなので、より事情は複雑です。江戸川乱歩→三島由紀夫→美輪明宏まで、ある意味、換骨奪胎の連鎖によって成り立った舞台とも言えます。

ストーリーは浮き世離れした幻想的なものですが、美輪明宏が司祭となって、一瞬幻想が煌めいてリアルだと感じ取れる瞬間があるんですね。それを期待して行きましたが、期待に違わず、何度か幻想がリアルに煌めきました。

元々三島の戯曲には、「このレトリックを観客に説得するのは難しいだろう」と思われる部分が存在します。それがこの煌めきによって、すっと腑に落ちるんです。

他の追随を許さない演出と演技、美輪以外の人ではなかなかこうはいきません。

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佐村河内 守『交響曲第一番≪HIROSHIMA≫』

昨日、佐村河内 守『交響曲第一番』HIROSHIMAを聴いてきました。指揮 大友直人、オーケストラ 日本フィルハーモニー交響楽団、場所は東京芸術劇場です。

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昨年末、NHKで全聾の作曲家が交響曲を作曲した話を放送しました。番組は見ていないのですが、そういう放送があったことは知っていました。

1月にマーラーの第五番を聴きに東京芸術劇場に行った時のチラシの中に、その交響曲の「全曲特別演奏会(東京初演)」というチラシが入っていました。「ああNHKでやっていたやつだな」と思って少しネットで検索などしてみました。

聴力を失った被爆二世の現代のベートーベンが絶対音感を頼りに、マーラーの時代から100年の時を飛び越えて書き上げた奇跡の大交響曲だそうです。

指揮者の大友直人は東京交響楽団とこの曲をレコーディングしていますが、演奏を終わった指揮者と楽団員が涙を流していたそうです。これは、まさしく「驚天動地の音楽」ではないか、ぜひ聴きに行かなければと思ってチケットを予約しました。

会場では、演奏に先立ち大友直人がこの交響曲との出会いについて話をしました。演奏会では、演奏者は一切言葉を発しない通常のクラシックの演奏会とは違う異例の展開です。

TVカメラもいっぱい入って、会場に来ていた作曲者の佐村河内氏を追いかけていました。

肝心の曲はどうかといえば、重厚で壮大な楽曲であったことは確かですが、今回の1回ではじゅうぶん判断はできないと思いました。大友氏が演奏の前に語っていたように「ユニーク」といえば確かにそうです。そうした部分に素人っぽさを感じる部分もありました。

ただし、指揮をしている大友氏にしてもまだ手探りの状態かもしれません。本人自らの指揮による初演から始まって、何千回もの演奏が行われて現在の演奏があるマーラーの交響曲とは違います。

耳の聴こえない佐村河内氏は、演奏会で音を聴いて修正をすることができないというハンデもあります。

さらには残響の多い東京芸術劇場のこともあり、細部の音の絡みは明確には掴めない部分もありました。

だからこそ、機会があればまた聴いてみたい。いずれにしても今日はじゅうぶん堪能した、という気はしました。

ちなみにCDのレコーディングを行った大友直人と東京交響楽団の組み合わせによる演奏会が、8月にミューザ川崎で行われるそうです。

Lighter190E初ワンマンライブ "ONEMAN190E"

昨日Lighter190Eの初ワンマンライブを見てきました。下北沢Club Queです。

前回見たのが、去年の2月15日新宿LOFTだったので、ちょうど1年ぶりです。

年末にLighter190Eが新しいアルバムをリリースしたので、ワンマンを見ながらCDを買って来ようと、年末から予約を入れていました。

素晴らしかったですね。音楽のジャンルとしては必ずしも私の趣味とは一致していない(?)のですが、あっという間にそれを忘れさせて引き込まれました。良い意味で期待を裏切られるということでもあります。

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聴いているうちにソリッド・ポップ・アバンギャルドという言葉が浮かびました。一見ポップなメロディーにシンコペーションを活かしたギターリフが鋭角に絡み(ソリッド・ポップ)、予想もつかない展開(アバンギャルド)に導かれます。

ベース、ドラム、ギター・ボーカルの3人ですでにスリーピース・バンドのようにほぼ完成に近く構築されているところへ超絶ギターが自由自在に絡むといった感じで、実に小気味よいタイトな演奏が展開されます。

まぎれもなく世界最高水準の音楽がそこにありました。

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マーラー・ツィクルスVと東京芸術劇場

1月20日(日)にインバル=東京都交響楽団のマーラー・ツィクルスVを東京芸術劇場で聴いてきました。今回はホールの音響の確認もミッションです。

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まず、交響曲第5番ですが、マーラーの交響曲のなかでも音楽的密度の高い楽曲だということを改めて感じました。

マーラーの交響曲は、音楽要素以外の何かで楽曲が進行していくという印象があります。突然新しいメロディーが前の流れを断ち切るように現れてくることや、舞台裏オケの設定等が示すように、音楽の背景になんらかの物語が存在しているということです。

ところが、第1番から5番まで順番に聴いてきた印象では、他とは違って第5番は突然何かが起こるということがなく、一点に収束していくような音楽的必然性だけで進行していると感じました。1月20日の演奏は、それほど緊密に構築されていると感じさせる演奏でした。

長年マーラーの中でも圧倒的に好きな交響曲だった理由のひとつはそこにあったんだなと、思いました。

さて、東京芸術劇場の大ホールの音響はどうだったか、です。

まず、残響が多いホールであることを確認しました。それもリバーブレーション成分だけでなく、原音から数百ミリ秒くらい遅れて強いリピートエコーが発生しています。マーラーの第5番の前に、モーツァルトのフルート協奏曲の演奏があリ、フルートのカデンツァの部分で、それがよく分かりました。

実は、その2日前に東京オペラシティの大ホールで、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団のマーラー第4番を聴いてきたのですが、それが問題点を鮮明にする手掛かりとなりました。

東京オペラシティの大ホールは、これまた対照的に残響が極端に少ないホールで、マーラーの前に演奏されたモーツァルトの交響曲25番は、まるで室内楽のようにすき間の多い音だったのです。そのため、東京芸術劇場の残響の多さをはっきり認識することができました。

昨年の9月に第1番を聴いたときに感じた音の悪さは、やはり前日に飲み過ぎたお酒の影響もあったようで、そこまで音響が悪いとは思いませんでしたが、深いリバーブレーションはまだしも、演奏される曲に影響を与えそうな強いリピートエコーはいかがなものかとは思います。

いろいろなホールがあって、ホールを聴きに行くのも楽しみのひとつとも言えるかもしれません。それでも、東京芸術劇場の音響にあまりよい点数はつけられないというのが私の結論です。

マーラー・ツィクルスIV

正直マーラーの交響曲の中では、第四番はあまり好きな楽曲ではありませんでした。

しかし、第三番のパンフレットの解説を読むと、元々第四番は第三番の終楽章として計画されたものだとありました。

交響曲第三番は原始から、草木の時代、森と獣の時代から人間の時代までを描いたもので、その先に天国を描こうとしたのが、あまりに巨大になったため、切り離されて独立した交響曲として成立したのが交響曲第四番だそうです。

ということで、新たな気持ちで第四番を聴いてみようと思って、11月4日にみなとみらいホールへ向かいました。

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この交響曲は、シャンシャンシャンと鈴の音で始まり、何度もこのテーマが出てきます。第三楽章は息の長い弦楽合奏曲で、第五番の有名なアダージェットを予感させる曲です。

そのあと、切れ目なく第四楽章に入りますが、この楽章はソプラノ独唱の歌曲なんですね。大きく盛り上がることなく静かに終わります。盛り上がらない終楽章が変だとは思っていたのですが、これがマーラーの考えた天国なんだと思うと、感慨深いものがあります。

ソプラノは、森麻季さん、きれいな人でした。第二番、第三番はオーケストラの後ろに歌手がいましたが、第四番では指揮者インバルの左横です。

席が六列目でしたら、表情もよく見えました。CDで聴いているとあまり面白くない楽章ですが、目の前に女性歌手が出てくると華やかで別格で楽しめます。

ライブ録音していましたので、CDがそのうち出そうです。森麻季さんのCDと思うと、これまで歌手をよく知らずに聴いてきたCDより楽しく聴けそうです。

マーラー・ツィクルスIII

27日の土曜日にマーラー・ツィクルスIIIに行ってきました。横浜のみなとみらいホールです。

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今回の曲は交響曲第三番です。この曲は、第一楽章の勇壮なブラスが印象的な曲です。

CDを聴いているだけのときは、この冒頭のメロディーが圧倒的で、それゆえの第三楽章でした。しかし、2年半前に同じインバルと都響で生を聴いたときから、次第に第四楽章のメゾソプラノの独唱を魅力的に感じるようになりました。

そのときの歌手はイリス・フェルミリオンという外国人でしたが、歌い出しのリフレインが、実に神々しくてよかったのを記憶しています。

今回は池田香織という日本人です。メゾソプラノとコンサートマスターのバイオリンソロが掛け合いになる部分があるのですが、その部分が涙が出るほど素晴らしかったです。

東京都交響楽団といい、池田香織といい、日本人演奏家の演奏レベルも相当なレベルに達したんだろうなぁということを考えました。

わたし自身は、クラシックの演奏の客観的な評価が出来るほど、クラシックを聴き込んではいないので、あくまで想像ではありますが…。

さて、今回第一楽章の途中まで、ホールの外の音が漏れて聴こえて気が散りました。その後まったく聴こえなくなったので、あれはいったいなんだったんでしょうか。

蟲ふるう夜に 10月18日渋谷eggman

昨夜は雨の中、渋谷eggmanで蟲ふるう夜にのライブを見てきました。

8月のワンマン以来初めてのライブということでしたが、蟲ふるう夜にの進化がホンモノであることを確認することにもなりました。

演奏が始まると会場の空気がピンと張り詰める。ライブハウスで、そういう感じを持つのも久しぶりです。

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ところが、1曲目「クロイトモダチ」の2コーラスめに入ったところで、ボーカルの蟻がマイクを落として歌えず、会場のスタッフがステージに駆け上がってマイクを拾って手渡すも、すんなりと歌に戻れない。

私は、ギターの慎之介のほうを見ていた間のできごとで、何が起こったのか事態が飲み込めずにいましたが、いずれにしても、ボーカリストにあるまじき様と思いつつも、そんなことはものともせぬ圧倒的な集中力でステージは続いて、改めて蟲ふるう夜にの「いま」のすごさに驚いた次第です。

演奏の密度はワンマンのときより、上だったかもしれません。

ラストは「青の中の一つ」。やっぱりこの曲、以前と比べて見違えるようよくなっています。

次回は、CD『蟲の音』の中の佳曲、ワンマンでも演奏していない「それでも、その手を」をぜひ聴かせてもらいたいものです。

10月7日 HOMMヨ ONE MAN GIG!!

東高円寺二万電圧で、HOMM∃のワンマンライブ「HOMMヨ ONE MAN GIG!!」を観てきました。

会場は、ぎっちりというくらいに満員でした。東高円寺二万電圧は、決して大きい箱ではありませんが、20時スタートの、場所も丸ノ内線の東高円寺というところで、この大入りは予想外でした。いいバンドがワンマンをやるとなれば、人も集まるんだなということでしょうか。

音はいつも通り、整理されてないラフな感じです。一瞬では何の曲だか分からないくらいの演奏ですが、それが実に愉しめるので、不思議です。

特に、キクイマホのドラムは、いいと思いました。裏拍の移動で2小節単位で回っていくビートとか、フィルイン、さらにすき間を丁寧に音で埋めていくドラミングは、改めて素晴らしいと思いました。ワンマンということで、気合いが入っていたのか、いつもよりパワフルだったような気がします。

一見荒っぽいロックそうでいて、楽曲のよさと緻密な裏付けがあるというのがHOMMヨの音の秘密でしょうか。

衣装も、第一部と、第二部、アンコールで変わっていて楽しめました。特に第一部は「女装コーナー」と銘打っためったに見られそうもないHOMM∃が見られました。

第一部 女装コーナー
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第二部
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アンコール
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なお物販で、何とライブ盤の先行販売がありました。9月5日の収録ということなので、できたてほやほやです。インディーズのライブ盤というのも珍しいすね。じっくり聴いてみたいと思います。

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マーラー:カンタータ「嘆きの歌」

上野の東京文化会館でマーラーのカンタータ「嘆きの歌」を聴いてきました。

スーパー・コーラス・トーキョーという合唱団の特別講演と銘打った、東京都と東京都歴史文化財団が実施する「東京文化発信プロジェクト」の一環のイベントでした。

オーケストラは、マーラー・ツィクルスと同じエリアフ指揮、東京都交響楽団だったので、私自身は、マーラー・ツィクルスの一部のつもりで聴きに行った訳です。

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前置きが長くなりましたが、実は、このコンサートのチラシを見るまで、マーラーにカンタータがあるということさえ知りませんでした。もちろんCDも聴いたことがなく、このコンサートで初めて聴く楽曲でした。

コンサートのプログラムによれば、マーラーがまだ二十歳のころ、ウィーン音楽院の学生時代に作曲したものだそうですが、3部からなる大曲で、ロック・スピリット横溢の楽曲でした。130年前のロック組曲! 素晴らしかったです。

リック・ウェイクマンの「アーサー王と円卓の騎士」なんかと近いんじゃないかとか思って聴いていましたが、130年前のそれは現代のロック以上にロックしていたんじゃないか、と思いますね。

ところで、私がマーラーにロックを感じるのは、なぜか。やはりそれは、妥協のなさでしょうか。ここまでやるかっていう徹底ぶり、それでいて小難しくなくてストレート。で、かつ大仕掛け! 「嘆きの歌」でも舞台裏オケ(距離感を表現するため、客席から見えないところでオーケストラの一部が演奏する)がありました。

またまた、マーラーが好きになってしまいました。

マーラー・ツィクルスII

マーラー・ツィクルスIIを聴いてきました。

「交響曲第2番」です。終楽章で、神が降りて来るのを感じました。

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指揮者のインバルが、マーラーは神で、ひととき人間として地上に降り立ち、音楽を残していったのだというようなことを語っているビデオを見ていましたが、今日の「第2番」では、まさに神が降り立つのを感じました。

「交響曲第2番」は、CDとかの録音ではマーラーの中でも回数を聴いているほうですし、一昨年も同じインバルと東京交響楽団の演奏を聴いているのですが、この曲を神が降り立つ音楽と思ったことはありませんでした。全然違った音楽に聴こえました。

音楽は、やはり生を聴かないといけないということでしょうか。

ホールは、横浜のみなとみらいホールです。台風17号が接近している中、ちょっと遠出でしたが、音もよいと思いました。遠くまで足を運んだかいがありました。

ところで、「第1番」を聴いた東京芸術劇場の音響の悪さについての疑惑が再浮上しましたが、「楽曲のレベルも1番と2番では相当違うな」ということを改めて感じました。

その上、実はあのとき、前日の夜にお酒を飲み過ぎていました。たっぷり睡眠を取って体にお酒は残っている感じはまったくありませんでしたが、耳に影響があったりするでしょうか? 拙速に決めつけてもいけないので、音響についての結論は、来年1月に「第5番」を東京芸術劇場で聴くので、そのときまで保留とします。

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筆者のプロフィール

  • 竹内 晃

  • 1953年巳年生まれ
    電子楽器メーカーコルグに30年間勤務。退職後インディーズチケットオンラインを立ち上げ、現在に至る。

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